色留袖「描き疋田麻の葉に四君子丸紋様」
背景に描き疋田(かきびった)で麻の葉を配し、
全体に友禅と刺繍、箔で四君子の丸紋様を置きました。
金・銀・白のみのシンプルな配色でモダンさを少し出しながらも
友禅・刺繍・箔に関しては伝統的な技術を踏襲した技の光る色留袖に仕上がっております。
まずは描き疋田。
描き疋田とは通常、絞り染の技法で見られる鹿の子疋田絞りの柄を、
白くあがっている部分に糊を置いて染める事により糊を置いた部分が
染まらずそれが疋田の形になります。
細かな疋田の柄をあたかも絞りで染め上げたように描くこの技法は
ただの四角を描くのではなく真中の目の部分は染まるよう描く必要があり、
さらには一つ一つが微妙に大きさや形を変え、
かつ全体ではバランスのとれたものにする必要があり、
かなりの熟練の技術が必要とされます。
型を使用した摺り疋田という技法もありますが、
型ではこの味は決して出ません。
次は刺繍を見てみましょう。
金糸と銀糸を使用した駒縫いという技法を用いています。
これは金糸銀糸を絹の糸で留めて刺繍するというもので、
伝統的な技法の一つ。
この色留袖には四君子が刺繍されていますが、
それぞれ留め糸の色を白や赤、青などに変えて刺繍することで、
同じ金糸、銀糸でも見た目が異なる様工夫されています。
その結果、柄の遠近感と派手さの変化を表現することが出来るのです。
この留め糸の色の選択も刺繍職人のセンスが問われます。
そして重要なのは刺繍の下は友禅染をほどこす際にその柄の形に染め抜き、
さらに金糸の下はクリーム地、銀糸の下はグレー地に色をわざわざ挿してあるという点。
●「桜」表面
●「桜」裏面
●「梅」表面
●「梅」裏面
これをすることで刺繍や箔をほどこした際に金糸銀糸が際立ち過ぎず違和感無く見える効果があります。
実際表からは見えない部分にも技法が隠れています。
そして箔の技法。
このきものには箔、泥(でい)、筒描きといった技法が用いられています。
泥は樹脂に混ぜ込んだ金粉をはけにつけて直接生地に塗り込んでいく技法です。
これは全体にムラが出ないよう塗り込んでいくことに熟練した技術が必要となります。
また筒描きは樹脂に混ぜた金粉を先の細い金属の筒から出し描く方法で、
ちょうどケーキにチョコでメッセージを書く時に用いる方法と同じですね。
このきものには特に友禅染された柄のふちのほとんどを筒書きで金を置いており、
より柄が立体的に見えるよう工夫されています。
古典柄にこだわった大変上品な色留袖です。
※お問い合わせ先
小大丸
メール kodaimru@dance.ocn.ne.jp
電 話 06-6211-5021